私の担当医。~2~

海斗のマンションの鍵がある。
景色を少し眺めに行くことにした

《すず、1時間以内に戻ってこい》

戻るわけない
1時間で気持ちの整理がつくなら
病院から出て行かないよ。

メッセージに既読だけつけて
タクシーでマンションに向かった


...プルルル

リビングで電話が鳴り響いている

どうせ海斗だろう

電話がうざくてしばらくトイレにこもった
リビングに戻って
携帯をみると着信25件
20件海斗であとは真由さんと翔太くんだった

別に隠れてるわけじゃない
気分転換しにきただけ

なんでこんな...
みんな過保護なんだよ
私だってもうちゃんと大人なんだから。

...プルルル

「なに」

『電話に出ない理由は?』

「トイレに行ってたから」

『どこにいる』

「言いたくない、1人でいたい。」

『1時間で戻ってこいって言ったはずだ』

「だれも戻るなんて言ってない」

『これ以上、俺と凌を待たせるな』

時間を見ると19:30を回っていた
まだまってんの
諦め悪いなぁ

『すずが頑張るって言ったんだろう。
その言葉でみんな必死に動いて準備してる。
その人たちを裏切るな』

「何その言い方。
私だって気持ちを整理して色々と受け入れようと努力してる。1人になりたい時だってある。もう私は子供じゃない。ほっといて」

『ほっといて病気が治るならそうする。
ただすずはほっとくと覚悟決めるのに時間がかかる。そんなことしてると悪化しかしない。担当医、そして夫としてそうはさせない。今すぐに戻ってくるなら待つ。戻ってこないなら赤ちゃんは諦める』


電話が切られた

相当怒っている

久しぶりに海斗に怒られて
淡々と話をされた
ほっといたら治るのか
出会った当初も同じこと言われた

こんなに怒られたのは結婚してから初めてだ。

何でそんなにすぐ赤ちゃんを諦めるとか言えるの

あーもうわからない。
どうしたらいいかわからない。

気持ちの整理がつかなくてしばらくモヤモヤしてると
海斗から追いメッセージが届いた。

《ごめん、少し言いすぎた。
迎えに行くから位置情報送って》

涙が出てきた。
海斗の言いたいこともわかる

でも私の気持ちも不安定。

海斗を避けたいわけじゃないし
傷つけたいわけじゃない
迷惑もかけたいとも思ってない

でもなかなか気持ちと行動がうまいこといかない

涙が止まらなかった

...プルルル
気がつけば海斗に電話をかけていた

『はい』

「ウウッ...ヒクッ...」

『すず?』

「...ヒクッ」

『わかったから落ち着いて。
俺のマンションにいるだろ。今から向かうから。』

なんで私の場所わかるの。

「...来なくていい」

『またそんな嘘ついて強がる
じゃなんで電話かけてきた。なんで泣いてる』

「...1人になりたいの」

『泣くな。発作出たらやりたくないこと強制的にやるハメになるよ』

「...だって...だって」

『落ち着いて。今すぐ向かうから。
大丈夫だよ、すず。
俺は敵じゃない。
さっきは言いすぎた。ごめんな。
今日は検査も話もしないからとりあえず落ち着こう。』

「私も自分でどうしたらいいかわからない。頑張るって気持ちはあるけど
でもやっぱり怖くて一歩踏み出せない。

...海斗が
海斗が...

怒るんだもん。
そんな怒られたのひさびさで
もっとどうしたらいいかわからない

...ウワーン...ウワーン」

『ははっ。
俺はいつも通りさ。

そういえばすずに話そうと思ってたんだけど昨日コンビニ行ったらさぁ
新しいデザートがあって

それで...

あとさ...』

海斗は本当に何もなかったように
別の話を淡々とし始めた。


その話を聞いてる間にだんだん
気持ちも落ち着いてきた

< 122 / 144 >

この作品をシェア

pagetop