私の担当医。~2~

..ガチャ

ドアのあく音と同時に
電話が切れた

海斗の顔を見た途端
せっかく止まった涙がまた出てきた。

「...グスン」

「わかったからもう泣くな」

「...ごめんなさい」

「俺もきつく言いすぎた。
仲直りしよう」

そういって海斗は私を抱きしめてくれた。

泣き止むまでずっと
離れずそばにいてくれた。


「落ち着いた?」

「...うん」

「よし、病院帰るぞ」

「今日はここで寝たい」

わがままだとわかってるけど
病院に戻りたくなかった。


海斗は少し考えて
首を横にふった

「ダメだな」

「なんで」

「...なんでもだ。帰るぞ」

それだけ言って海斗は部屋を出て行った。

なんでよ...

仕方なく海斗について行って
部屋を出た。


マンションのエントランスに降りると海斗の車が停まっていてなにも会話をしないまま車に乗り込んだ

そのまま走り出しても無言が続いた。
気まずさでついに私から話しかけた

「海斗。」

「ん?」

「怒ってる?」

「いんや。」

「じゃなんでなにも話してくれないの?」

「まずなんの話からすればすずは最後まで俺の話を聞いてくれるか考えてた」

「じゃ私から話してもいい?」

「いいよ」

「悪阻が始まったっぽくてね。
一度、気持ち悪くなるとトイレから出れないの。それでごはんもあまり食べられないし。低血糖でまた倒れないか心配なんだけど...」

「そっか、それも凌と相談だな。
赤ちゃんが元気な証拠だな。
安心だ」

また沈黙が続いた。
いつもの海斗じゃない気がした

「...病院戻りたくない」

「なんで?」

「怖い...」

妊娠して私のわがままを全く聞いてくれなくなった。
 
今までと同じにはいかない

それを私もわかってるし頑張らないといけない

でもすぐにそんな簡単に変われない。

「出会った時のすずに戻ったか?」

「...」

「大丈夫だ
すずは強くなってる」

「そんなことを言ってるんじゃない
今日は帰りたくない...」

「ははっ。
運転手は俺。
残念ながら目的地は我が病院です。」


それから何も言わずに
病院に戻ってきてしまった。

なぜか震えて車から降りれない。

本当に初めて病院に来た時と同じだった。

少しは克服したはずなのに...

どうして急にまた...

「ついたぞ、降りろ」

「むり...」

海斗は運転席から降りた。

助手席側に立ち車から降りれず座ってる私に目線を合わし震えてる私の足に手を置いた。

「なんもしない。約束する。
とりあえず部屋に戻ろう」

海斗に腕を引っ張られ
助手席から降りた

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