私の担当医。~2~

透析室についてすずが休んでるベッドを覗くとぐったりしているすずがいた。

「すず」

「...海斗」

「よく頑張った。本当に。
すごすぎるよ。」

頭をくしゃくしゃとめーいっぱい褒めた

「うん...」

あまり嬉しそうじゃない
それよりしんどそう
顔色悪いし呼吸も荒い

「ちょっと酸素吸っとこう」

「いい。」

ここまで頑張ってなんでそれを拒否する。
薬入れられると思ってるのか

「大丈夫。なにも入れないから。ただの酸素。さっとやって部屋戻ろう」

「部屋でだったらやる」

それくらいのわがままなら聞いてやるか

4時間も戦ったこの場所にもういたくないだろうしな

「わかった。
車椅子に乗れるか?」

「歩ける」

「はぁ...」

すずは車椅子やストレッチャーを嫌がる
それは何もできない自分が嫌と以前きいたことあるけど途中で倒れられた方が困る

「わかった、俺のお姫様抱っこで部屋まで戻るか、車椅子かどっちがいい?」

「ははっどっちも嫌」

苦しそうにすずが笑った
お姫様抱っこが面白かったんだろう

「はやく決めて〜」

「車椅子」

「よし、持ってくるわ」

作戦成功
そんなにお姫様抱っこが嫌なのか
少しショックだけど大人しく車椅子に乗ってくれた

部屋に戻って酸素を入れた

しばらくしてからすずは顔色が戻りつつ眠りについた。

相当疲れていたのか
俺の午後の外来診察が終わって
部屋に戻っても
起きてなかった

たまにみにきて
酸素も外したけど

起きてなくて6時間はきっと寝ている

シャワー浴びて晩御飯を作ったところで
ようやくベッドでゴソゴソと音が聞こえた。

「すず〜
行くからちょっと待ってて」

料理から手を離せなくて
叫んだ

すぐにすずがリビングに出てきた。

「海斗...」

「体調大丈夫か?待っててって言ったのに...」

「よく寝たから調子いい」

「ならよかった」

「ご飯作ってんの?」

「うん、すずは今日頑張ったからご褒美でご馳走だぞ」

「あー
嘘ついちゃって...
海斗怒らせちゃったから...
頑張って耐えたけど本当に辛かった。
もうできない」

「1人で4時間耐えた
それだけで十分。
次もできるとも思ってない。
また頑張れる時に頑張ればいいよ」

「...ねぇお願いがあって...」

「なに?聞くだけ聞いてやる」

「仕事行かせて。もう嘘つかないから」

それが理由か
それが理由でもよく頑張った

「本当だな。
一生嘘つくなよ」

「...うん」

「じゃあ明後日から行ってもいい
ただ血糖値測って点滴は続く、覚悟しろよ」

「...」

すずの顔が曇って
明らかに嫌そうだったけど
俺が作ったご飯を美味しく食べてくれた。



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