その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】

〇翌日。昼休みの教室。

女子生徒1「夏目君、一緒にお昼食べよう?」
女子生徒2「あ、ずるい私も食べたい!」

 クラスの女子が、お弁当を持って綾人の席に集まる。

綾人「ごめんね、もう約束が……」

 そう言いながら後ろを振り返るが、翼はもう席にいなかった。

 目を細める綾人。

綾人(……逃げたな)


〇人目につかない空き教室。

 空き教室はたまに、生徒の会議などがあるのか、教室前方は茶色の長机が教卓を囲むように、コの字型に置かれている。

 教室後方には、机の上に椅子が置かれた物や、パイプ椅子が折りたたまれてある。

翼「うっ、なんだか寒気が……」

 風邪ひいたのかな、と腕をさする翼。
 翼は長机にお弁当を広げていた。
 教室の窓を背にして教卓に一番近い長机の、端っこの席に座る。

翼「ふふ、ここなら一人でゆっくり食べられる」

 後ろの窓のカーテンが開け放たれており、日差しが入る。

 天気のいい今日は、じりっと後頭部が焼かれるようだった。
 翼カーテンを閉めようと立ち上がる。
 カーテンに手をかけて、ふと翼は考えた。

翼(あ……、詩音ちゃんも誘えばよかったなぁ。綾人君から逃げる事に必死だったから、忘れてた)
翼(明日は頑張って誘ってみよう)

翼「よし、今日のおかずはなにかな〜……」

  カーテンを閉めて、振り返った翼は動きを止める。
 長机に置かれた翼のお弁当を「じーーっ」と、しゃがんで見つめる瑠叶の姿が。
 ぐぅ〜、と瑠叶の腹の音が、空き教室に響いた。

翼(……だれっ!?)

〇時間経過〇

 翼の右隣に座り、もぐもぐと卵焼きを頬張る瑠叶。

瑠叶「いやぁ、今日は弁当を忘れた上に、財布も持ってきてなくてさ。助かったよありがと」
 
 二つ目の卵焼きが、瑠叶の口の中へ入るのを見て涙する翼。

翼(さらば、私の卵焼きッ)

 卵焼きの油がついた指をぺろりと舐め、瑠叶は翼を見た。
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