その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】
〇脱衣所

 お風呂から上がった翼は、タオルを体に巻いた。
 髪の毛を乾かそうと、ドライヤーのコードをさそうとした時──脱衣所の扉が開く。

 入って来たのは瑠叶だ。
 眠たそうに目をこすっているため、寝ぼけているのかもしれない。

翼「──瑠叶君!?」

 これでもかと目を見開いた翼。
 咄嗟に、扉を閉めようと一歩を踏み出した。しかし床が濡れていたのか、つるんっとすべってしまう。

翼「きゃあっ!?」
瑠叶「へ」

 瑠叶へと突撃したに等しい翼。
 瑠叶は翼を抱きとめる。
 タオルを巻いているとは言え、肩などは出ており、翼の素肌に触れてしまった瑠叶。

 翼と瑠叶の視線が交差する。
 瑠叶は少し目を見開き、動揺しているようだ。みるみるうちに翼の顔が赤くなる。

瑠叶「──大丈夫?」
翼「う、うん」

 発狂していても、おかしくない状況に置かれている翼。
 だが仏のように、すんっとしている瑠叶の反応に戸惑ったのか、発狂することなく返事ができていた。

 しばし見つめ合う二人。
 翼を凝視している瑠叶は、徐々に顔を近づけて来た。

翼「え、ちょ、瑠叶く」

綾人「──翼ちゃん? すごい声がしたけど、どうかした……」

 タイミングが悪いのか良いのか、綾人が脱衣所にやって来た。
 ピタリと瑠叶の動きが止まる。
 綾人は瑠叶と翼の状況を把握すると、目を見開いた。

 次に発せられた声は低い。

綾人「蓮水君、翼ちゃんになにし……」
翼「ぎゃーー! 二人とも出てって!!」

 綾人に見られたことにより、正気に戻った翼は恥ずかしさが沸々とわいてきた。

 バタンッ! と勢いよくしめられる扉。
 綾人と瑠叶は締め出されてしまった。
 廊下に立ち尽くす二人。
 綾人は「はぁ」とため息をつき、腕を組む。

綾人「……ふらふらとリビングを出て行ったから、トイレかと思った。まぁ、あらかた想像はつくけど一応聞いておくよ。蓮水君、どうして脱衣所にいたの」
瑠叶「…………」
綾人「蓮水君?」
瑠叶「僕は……!トレイ行こうと思って間違えちゃった。後でつーちゃんに謝らなきゃ」
綾人「……そう。鍵をかけてない翼ちゃんも悪かったけど、今後は気をつけてくれ。君、学校や外で間違えたら、もっと大変な事になるよ」
瑠叶「だね」
綾人「本当にわかってる?」

 綾人はもう一度ため息をつき、リビングへと戻って行く。
 綾人の姿が見えなくなってから、先程翼に触れた手のひらをじっと見つめる瑠叶。

 瑠叶目線で、華奢な体、翼の潤んだ瞳や濡れた唇が思い浮かぶ。
 先程のシーンではわからなかったが、綾人が現れた時、瑠叶はほっとした表情になっていた事がここでわかる。

瑠叶(…………?)
(なんで僕、あの時ほっとしたんだろ)
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