その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】

翼(まずは一組から。私の名前は……)

 上から順に見ていき、出席番号が最後の方で『夏目』を文字を発見する。

翼(あった!)

 と思ったが『夏目翼』ではなく、『夏目綾人』だった。

翼(紛らわしいなっ!)

 ぷんすか怒りながら、その下に目を滑らせる。すると『夏目翼』と書かれていた。

翼「終わった……」

 どよーん、と翼の周りの空気がよどむ。
 同じく、貼り紙を見ていた綾人が声を上げる。

綾人「あ」
翼「ひぇっ!」

 肩をびくりとさせる翼。

綾人「ふふっ、同じクラスだね翼ちゃん。嬉しいな」

 翼に目をやり、ニヤッと笑う綾人。

翼(私は全然嬉しくないです!!)


〇一年一組、教室入り口

翼(や、やっとついた教室……!!)

 肩で息をして、翼はゲッソリしている。
 これには訳があった。

 教室に来るまでに綾人が、色々な生徒の注目を集めていた。
 そのたびに隣にいる翼にも、

女子生徒1「あの子誰?」
女子生徒2「彼女?」
女子生徒3「いや、妹じゃない?」

 と、ヒソヒソと噂され注がれる視線が。
 耐えられなくなった翼は、綾人を置いて一人で教室に向かったのだ。

 ガヤガヤと、すでに教室の中は賑わっていた。

翼(私の席はっと……)

 黒板に書かれている座席を確認する翼。

翼(お、結構いい席かも?)

 翼の席は廊下側から2番目、後ろからも2番目。ラッキー、とほくそ笑む翼。

 翼が席に座ろうとすると、翼の後ろの席には机にうつ伏せで寝ている、蓮水瑠叶(はすみるか)がいた。
瑠叶:ふわふわの蜂蜜色の髪(金髪)、シンプルなピアスが両耳についている。

翼(もうすぐ入学式なのに、寝てる……?)

 ぎょっとしつつ、鞄を前に抱きしめて気遣うようにそーっと席に座る翼。
 ふぅ、と息をついたタイミングでガタッ、と前の席に誰かが座る。

翼(ん?)

 座ったのは綾人。
 綾人を見た翼は、慌てて黒板を確認する。
 しっかりと、翼の前の席には『夏目綾人』と書いてあった。

翼(そりゃ、同じクラスで苗字も同じなら席は前後だよね!!)
 
 くるりと後ろを振り向く綾人。
 ひえっ、と小さく悲鳴が漏れる翼。

綾人「……なに、俺が前の席だと不満?」
翼「べべ、別にっ? ちょっと背が高いから邪魔だなぁとか、思ってないよ?」
綾人「ワンちゃんには、ご主人様が巨人に見えちゃうのは仕方ない。ごめんね?」

 ニコニコ笑顔の綾人。

翼(……なんですってーー!?)

 ぐぬぬ、と怒りそうなのを翼が我慢していると右隣に人影が。
 その正体は、机の上にカバンを置く若倉詩音(わかくらしおん)だ。
 若倉詩音:黒髪、ポニーテール。クールビューティー。

詩音「あれ、夏目だ」

 声のした方を見る翼。

翼(わっ、綺麗……)

 翼は詩音を見つめる。
 綾人は、詩音がいるとは思っていなかったようで、軽く目をみはった。

綾人「若倉。君も同じ高校受けてたっけ?」
詩音「みたいね。最悪、夏目のせいでまた女子がうるさい」
綾人「俺のせいじゃないよ」

 二人のやりとりを静かに聞く翼。

翼(二人は中学の知り合いなのかな? 結構、気さくに話してる)

 パチリ、と翼と詩音の目が合う。

翼「お、おはようございます?」
詩音「? おはよう」

 疑問系に言う翼。
 首を傾げつつ、それに返す詩音。
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