S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「結婚を公表できる段階になったら、紹介するよ。礼儀正しくて真面目ないいやつだ。ただ……外見の印象とは真逆で、内面が繊細すぎるんだよな」

 柾樹の話によると研修医の彼――裕実は担当した元患者から、困った嫌がらせを受けているらしい。

「三浦が執刀した虫垂炎の術後、身体に不調が出ているとその女性は主張しているんだが、助手としてついたベテランの医師も手術にはなんの問題もなかったと言っているし……そもそも、彼女の訴える不調は虫垂炎の影響とは考えづらいものなんだ」

 つまり、裕実には責任のないものと柾樹は考えているようだ。

「医療過誤は絶対に起きないとは言い切れないものだから、患者からの訴えには真摯に耳を傾けるべきだと俺も思っている。ただ彼女の主張は……『責任を取って結婚しろ』と三浦を脅したり……あまりにも目に余る」

 医療過誤を訴えているというよりストーカーに近い状況なのだろうか、と和葉は想像した。

「でも、そんなに身体の大きな男性につきまとうなんて、逆にやり返されちゃう可能性もありそうなのに」

 ある意味、怖いもの知らずの女性だと思う。柾樹は困った顔でため息をつく。

「だからこそ、三浦はあまり強く出れないんだろうな。彼女はそこにつけ込んでいるんだ」
「なるほど……。じゃあ、あの夜は三浦さんの相談に乗っていたんですか?」
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