S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 初めから素直に聞いていれば、ささいな誤解だとわかったのに。

(柾樹さんは私の存在を隠したいとも思ってなかったし、あの夜は本当に病院にいた。誤解が解けた今となっては、空回りしちゃった自分が恥ずかしい)

 柾樹はふと思いついたように、和葉に尋ねた。

「なんで、最初から俺に言わなかったんだ? 和葉なら『どういうことですか?』って詰め寄ってきそうなもんなのに」
「うっ……そ、それは……」

 柾樹はまったく気がついてもいないようで、不思議そうに首をひねっている。
 和葉は観念して、正直に彼に告げた。

「怖かったんです。柾樹さんに、ほかに好きな女性がいたらどうしようって……」

 和葉は羞恥に頬を染める。

(これ、ほぼ告白だよね。どうしよう、柾樹さんはどんな反応を――)

 脳がキャパオーバーを起こしかけている和葉を、柾樹はグイッと力強く引き寄せた。痛いほどにきつく抱きすくめられる。早鐘を打つ心臓の音は自分のものか、彼のものか、どちらだろう。

「いない。ほかの女なんか目に入らない。俺には――和葉だけだ」

 感極まったような声でささやかれ、和葉の胸も熱くなる。
 和葉はクスリと苦笑する。

「悔しいけど、柾樹さんの言ったとおりになってしまいました」
「え?」
「ほら、柾樹さんがいつか言ったでしょう。『俺は和葉を愛するし、それ以上の重みで、お前も俺を愛するようになる』って」
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