S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
振り返ると、和葉が心配そうに顔をのぞき込んできた。林檎のように赤く、丸い頬がなんとも愛らしい。
「和葉……」
「喘息? 外は寒いし、早くおうちに入ろう」
「――うん」
和葉の小さな手が柾樹の手首を引っ張る。情けないけれど、彼女の手の温かさにホッとして少しだけ呼吸が楽になった。
使われていないときはふたりの遊び場になっている広々としたお座敷。座布団を並べてふたりで座る。
暖かい室内に入り発作を鎮める薬を使うと、うるさかった喘鳴もおとなしくなった。
「どう、苦しい?」
和葉を安心させるように、柾樹はふるふると首を横に振る。
「ううん、もう大丈夫だ」
「よかった! こんなに寒いのに、どうしてお庭に出てたの? お散歩?」
「ちょっとな……」
「また悩みごと? まーくん、センサイだから」
大人が使っていたのであろう難しい言葉を得意げに使う彼女に、柾樹は唇をとがらせる。
「別にそんなんじゃないよ」
口ではそう言ったけれど、柾樹の喘息は不安や心配ごとがあるときに悪化しやすいのも事実だった。柾樹はぽつりとこぼす。
「今日、算数のテストが返ってきたんだけど……九十八点だったんだ」
いつも満点なのに、くだらないミスをしてしまった。こんな間違いをしていて、将来ちゃんと医者になれるのか、立派な〝円城寺の後継者〟になれるのか不安になってしまったのだ。
「和葉……」
「喘息? 外は寒いし、早くおうちに入ろう」
「――うん」
和葉の小さな手が柾樹の手首を引っ張る。情けないけれど、彼女の手の温かさにホッとして少しだけ呼吸が楽になった。
使われていないときはふたりの遊び場になっている広々としたお座敷。座布団を並べてふたりで座る。
暖かい室内に入り発作を鎮める薬を使うと、うるさかった喘鳴もおとなしくなった。
「どう、苦しい?」
和葉を安心させるように、柾樹はふるふると首を横に振る。
「ううん、もう大丈夫だ」
「よかった! こんなに寒いのに、どうしてお庭に出てたの? お散歩?」
「ちょっとな……」
「また悩みごと? まーくん、センサイだから」
大人が使っていたのであろう難しい言葉を得意げに使う彼女に、柾樹は唇をとがらせる。
「別にそんなんじゃないよ」
口ではそう言ったけれど、柾樹の喘息は不安や心配ごとがあるときに悪化しやすいのも事実だった。柾樹はぽつりとこぼす。
「今日、算数のテストが返ってきたんだけど……九十八点だったんだ」
いつも満点なのに、くだらないミスをしてしまった。こんな間違いをしていて、将来ちゃんと医者になれるのか、立派な〝円城寺の後継者〟になれるのか不安になってしまったのだ。