S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 和葉はキョトンとした顔で小首をかしげた。

「えーっと、自慢?」
「九十八点を自慢するほど俺は低レベルじゃない」

 学校の友達には絶対にこんなこと言ったりしない。世間知らずなお坊ちゃんの柾樹でも、こういう発言が反感を買うことくらいはわかっている。

(和葉なら大丈夫。和葉は……)

「なるほど。まーくんの九十八点は私にとっての三十点か。うん、それはショックだよね」

 無意識に頬が緩む。和葉のこの性格に、いつも柾樹は救われている。

『礼儀がなってなくて、本当にごめんなさいね』

 和葉の母の和香子はよくそんなふうに言うが、〝円城寺家の後継者〟ではなく、ただの柾樹を見てくれるのは和葉だけだ。
 和葉は天真爛漫な笑顔を浮かべる。

「心配いらないよ。まーくんなら、次は百点取れるから!」
「なにを根拠に……」
「本当だって! じゃあ、和葉がおまじないかけてあげる」
「なんだよ、それ」

 和葉は柾樹の手を取り、円を描くように撫でた。

「くすぐったいって」
「まーくんは誰よりもかっこよくて、誰よりもすごい。だから絶対に大丈夫」

 おまじないは信じていないけれど、たしかに和葉の声は柾樹に力を与えてくれるような気がした。

「これからも不安になったら、このおまじないをかけてみてね」

 和葉はそう言って、得意げに鼻を高くした。

「俺、かっこいい? 顔?」
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