S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
『顔がかっこいい』は学校の女の子たちにもよく言われる。けれど、和葉に言ってもらったのは初めてだった。

「そうだね。初めて会ったとき、お母さんと『王子さまみたいだね』ってびっくりしたよ。でも――」

 和葉はじっと柾樹を見つめる。特別にかわいい顔立ちの子というわけではないのだろうけど、柾樹は彼女のキラキラと輝く瞳が好きだった。

「なんだよ?」
「まーくんのかっこいいところはね、なんでも一生懸命がんばるところ。お勉強もすごいし、喘息があって苦しいのにマラソンもがんばってた。あとね……いつも和葉に苺をちょっと多くくれる!」
「ははっ」

 柾樹は思わず噴き出してしまった。和葉は苺が大好物だ。つい最近もおなかを壊すほどの量を平らげていた。

「苺はやるよ。その代わり、これからも……さっきのおまじないは和葉がかけてよ」

 自分でかけるよりそっちのほうが、効果がありそうに思うからだ。

「わかった。約束ね」

 大切な友達、かわいい妹、そして……柾樹の初恋の相手。
 そんな彼女とずっと一緒にいられるものと信じていたのに、別れは思っていたよりずっと早く、突然だった。

「和葉っ。なんでだよ。ずっと一緒だと思ってたのに」

 松の木の下で、柾樹は和葉の両手を握った。和葉も寂しそうな声で答えた。

「わかんない。イッシンジョウのツゴウってお母さんが……」
< 133 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop