S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
末期癌でやってきた女性患者の顔に見覚えがある気がして、気になっていた。けれど彼女はあっという間に亡くなってしまって、結局本人に尋ねる機会もなくしてしまった。
ところが、ある日ふと、円城寺本家にお邪魔したときにお茶を出してくれた女性だと思い出したのだそうだ。泣きぼくろが、自分の母親と同じだったため強く印象に残っていたらしい。
「それって……」
「えぇ。院長に内密で教えてもらったんだけど、和香子さんだったわ。末期癌だったという話だから、きっとうちに迷惑をかけないように黙ってやめてしまったのね。……彼女らしいわ」
和香子は柾樹にも親切にしてくれた。その彼女がもうこの世にいないなど、とても信じられない。
「和葉は?」
あんなに母親が大好きだった和葉は今、どんな気持ちで過ごしているのだろう。心配でたまらなかった。
「私もそれが気がかりで。もし身寄りがないなら、うちで一緒に、と思ってるくらいなんだけど……」
寧々はつてを駆使して和葉の行方を調べてくれた。円城寺の情報網はそこらの調査会社より数段上なので、彼女のことはすぐにわかった。絶縁状態にあった祖父と暮らすことになったらしい。
「神田で飲食店をされているらしいわ。すぐ近くだし、会いに行ってもいいか聞いてみましょうね」
ところが、ある日ふと、円城寺本家にお邪魔したときにお茶を出してくれた女性だと思い出したのだそうだ。泣きぼくろが、自分の母親と同じだったため強く印象に残っていたらしい。
「それって……」
「えぇ。院長に内密で教えてもらったんだけど、和香子さんだったわ。末期癌だったという話だから、きっとうちに迷惑をかけないように黙ってやめてしまったのね。……彼女らしいわ」
和香子は柾樹にも親切にしてくれた。その彼女がもうこの世にいないなど、とても信じられない。
「和葉は?」
あんなに母親が大好きだった和葉は今、どんな気持ちで過ごしているのだろう。心配でたまらなかった。
「私もそれが気がかりで。もし身寄りがないなら、うちで一緒に、と思ってるくらいなんだけど……」
寧々はつてを駆使して和葉の行方を調べてくれた。円城寺の情報網はそこらの調査会社より数段上なので、彼女のことはすぐにわかった。絶縁状態にあった祖父と暮らすことになったらしい。
「神田で飲食店をされているらしいわ。すぐ近くだし、会いに行ってもいいか聞いてみましょうね」