S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
痛いところを突かれて、柾樹は言葉に詰まる。自分でもそこは自覚していて、それなりに良心を痛めてはいた。育郎と芙蓉、和葉が断れないことをわかったうえで結婚を持ちかけたのだから。柾樹は前髪をくしゃりと乱して、ぼやく。
「だからこそ、絶対に和葉を振り向かせる。俺との結婚を後悔させたりしない。それに……昔のこととはいえ、俺たちは結婚を誓った仲だ。破棄した覚えはないからな」
苦しいことは承知で柾樹は言い切った。案の定、寧々と唄菜には失笑されてしまった。
「大昔すぎるし、そもそも和葉ちゃんは覚えていないじゃない!」
「――うるさい」
強引に自分のものにした以上、柾樹には和葉を世界一幸せな花嫁にする義務がある。抱えきれないほどの愛を注いで、いつも和葉が笑っていられるように――。そう心に誓った。
* * *
季節は十二月に入った。円城寺メディカルセンター、外科医局。
束の間の空き時間に、柾樹はストレッチがてら軽く肩を回す。午前に難しい手術を終えたばかりで、肩は重いが心は軽やかだ。
「円城寺先生。なにか、いいことでもあったんですか?」
ベテランの女医が柾樹を見て、ふっとほほ笑む。
「最近、ずっと楽しそうにしてますよね」
「別に、そんなことはないが……」
一応、院内では円城寺家の後継者らしく振る舞うようにしているつもりだった。けれど、この大きな喜びはどうにも隠しきれなかったようだ。
「だからこそ、絶対に和葉を振り向かせる。俺との結婚を後悔させたりしない。それに……昔のこととはいえ、俺たちは結婚を誓った仲だ。破棄した覚えはないからな」
苦しいことは承知で柾樹は言い切った。案の定、寧々と唄菜には失笑されてしまった。
「大昔すぎるし、そもそも和葉ちゃんは覚えていないじゃない!」
「――うるさい」
強引に自分のものにした以上、柾樹には和葉を世界一幸せな花嫁にする義務がある。抱えきれないほどの愛を注いで、いつも和葉が笑っていられるように――。そう心に誓った。
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季節は十二月に入った。円城寺メディカルセンター、外科医局。
束の間の空き時間に、柾樹はストレッチがてら軽く肩を回す。午前に難しい手術を終えたばかりで、肩は重いが心は軽やかだ。
「円城寺先生。なにか、いいことでもあったんですか?」
ベテランの女医が柾樹を見て、ふっとほほ笑む。
「最近、ずっと楽しそうにしてますよね」
「別に、そんなことはないが……」
一応、院内では円城寺家の後継者らしく振る舞うようにしているつもりだった。けれど、この大きな喜びはどうにも隠しきれなかったようだ。