S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 それから数日後。

 柾樹の運転する車は東京郊外を走っていた。

「新婚旅行ですか?」

 助手席の和葉は柾樹を見て、聞き返す。

「そう。子どもが一歳を迎えてからになると思うが、家族三人でどこか行かないか?」
「わぁ、いいですね! どこがいいかな?」
「円城寺系列のスパリゾートは海外にもあるから、そこでもいいな。モナコはどうだ?」
「素敵! でも子連れで行くには遠くないでしょうか」

 赤ちゃんを連れての飛行機、それも長時間は大変そうだ。和葉がそれを言うと柾樹は「問題ないよ」と首を横に振る。

「プライベートジェットを使えばいい。子どもが泣いても誰も怒らないぞ」

 和葉は目を白黒させる。一緒に暮らしはじめてしばらく経ち、円城寺家のセレブぶりにも多少は慣れてきたと思っていたが……プライベートジェットまで所有しているとは知らなかった。

「家族旅行程度で、使っていいものなんですか?」

 世界が違いすぎて、和葉にはよくわからない。

「もちろん。使えるときに使わないなら持ってる意味がないしな。そんなわけで、移動の心配はいらないから、和葉の好きなところに行こう。考えといてくれ」
「はい!」

 モナコも素敵だけれど、柾樹と赤ちゃんと一緒ならどこだって楽しいはずだ。

(ふふ、楽しみだな)

「車酔いはしてないか? もうすぐ着くからな」
「はい、大丈夫です」

 柾樹の言葉に、和葉は窓の外に視線を向ける。東京都下とはいえ、この辺りは比較的のどかな風景が広がっていた。小さいけれど畑などもちらほら見える。高層ビル群がないので空も広い。
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