S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
(おじいちゃん!)
「おそらく脳卒中だ」
「意識レベルは確認済みですか?」
柾樹は同乗の医師に育郎の症状などを説明し終えてから、和葉の隣に座った。
「――おじいちゃん、助かりますよね? 私、おじいちゃんになにかあったら……」
その先の言葉は続かなかった。育郎は和葉にとって唯一の肉親だ。
和葉は父を知らない。顔も、どんな人間なのかも、母と結婚しなかった理由も――。
父の代わりも母の代わりも、育郎が担ってくれていたのだ。
(なにかあったら……そんなこと、考えたくもない!)
手のひらに爪が食い込むほどに強く握り締めた和葉のこぶしを、柾樹の大きな手がそっと包んだ。
彼の手の温かさで、和葉は自分の手がすっかり冷たくなっていたことに気がつく。
「診た以上は俺の患者だ。必ず、助ける」
嫌いだと思っていた男の言葉に、すがりつきたくなった。育郎のためならどんなことでもする。心からそう思った。
「お願いします、おじいちゃんを助けて」
震える声でつぶやく和葉に柾樹は力強くうなずいた。
総合病院、円城寺メディカルセンターは、芙蓉のある神田からもほど近い日本橋に位置している。名前は知っていたが、病院とは無縁の和葉が訪れたのは初めてだった。
ブラウンの外壁の大きな建物はまるでホテルのような高級感が漂う。想像以上に立派な病院で驚いた。
「おそらく脳卒中だ」
「意識レベルは確認済みですか?」
柾樹は同乗の医師に育郎の症状などを説明し終えてから、和葉の隣に座った。
「――おじいちゃん、助かりますよね? 私、おじいちゃんになにかあったら……」
その先の言葉は続かなかった。育郎は和葉にとって唯一の肉親だ。
和葉は父を知らない。顔も、どんな人間なのかも、母と結婚しなかった理由も――。
父の代わりも母の代わりも、育郎が担ってくれていたのだ。
(なにかあったら……そんなこと、考えたくもない!)
手のひらに爪が食い込むほどに強く握り締めた和葉のこぶしを、柾樹の大きな手がそっと包んだ。
彼の手の温かさで、和葉は自分の手がすっかり冷たくなっていたことに気がつく。
「診た以上は俺の患者だ。必ず、助ける」
嫌いだと思っていた男の言葉に、すがりつきたくなった。育郎のためならどんなことでもする。心からそう思った。
「お願いします、おじいちゃんを助けて」
震える声でつぶやく和葉に柾樹は力強くうなずいた。
総合病院、円城寺メディカルセンターは、芙蓉のある神田からもほど近い日本橋に位置している。名前は知っていたが、病院とは無縁の和葉が訪れたのは初めてだった。
ブラウンの外壁の大きな建物はまるでホテルのような高級感が漂う。想像以上に立派な病院で驚いた。