S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「い、一刻も早く検査をお願いします。おじいちゃんを助けて!」
ジワジワと広がる不吉な予感に押しつぶされそうで、和葉はとっさに柾樹の腕にすがった。彼はその手を振り払ったりせず、和葉の背を優しく撫でた
帰りはタクシーで、柾樹が自宅まで送ると申し出てくれた。タクシーが芙蓉に近づいたところで、和葉はあらためて彼に頭をさげた。
「本当にありがとうございました。情けないけど、あなたがいてくれたことに助けられました」
冷静に考えると、彼の前で取り乱してしまったことが少し恥ずかしい。彼はジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚を和葉に手渡した。
「困ったことがあれば、いつでも連絡しろ」
「え……」
和葉は目を瞬く。
「そ、そこまでしてもらうわけには……私とあなたは、友人でもなんでもありませんし」
今夜は乗りかかった船で助けてくれたのだろうが、これ以上を求めるほど和葉も図々しくはなれない。
柾樹はニヤリと皮肉げに笑む。
「自意識過剰、だな。お前のためじゃない。俺が初期対応をした以上、育郎さんは俺の患者だ。助かってもらわなきゃ困るんだ」
それから、柾樹はふいに和葉の腰に手を回した。
「ちょっと、どこを触って――」
グッと引き寄せられ、和葉の頭は彼の肩にぽすりと落ちた。柾樹は一段低くなった声でささやく。
「それとも、和葉のためだと言ってほしいか?」
ジワジワと広がる不吉な予感に押しつぶされそうで、和葉はとっさに柾樹の腕にすがった。彼はその手を振り払ったりせず、和葉の背を優しく撫でた
帰りはタクシーで、柾樹が自宅まで送ると申し出てくれた。タクシーが芙蓉に近づいたところで、和葉はあらためて彼に頭をさげた。
「本当にありがとうございました。情けないけど、あなたがいてくれたことに助けられました」
冷静に考えると、彼の前で取り乱してしまったことが少し恥ずかしい。彼はジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚を和葉に手渡した。
「困ったことがあれば、いつでも連絡しろ」
「え……」
和葉は目を瞬く。
「そ、そこまでしてもらうわけには……私とあなたは、友人でもなんでもありませんし」
今夜は乗りかかった船で助けてくれたのだろうが、これ以上を求めるほど和葉も図々しくはなれない。
柾樹はニヤリと皮肉げに笑む。
「自意識過剰、だな。お前のためじゃない。俺が初期対応をした以上、育郎さんは俺の患者だ。助かってもらわなきゃ困るんだ」
それから、柾樹はふいに和葉の腰に手を回した。
「ちょっと、どこを触って――」
グッと引き寄せられ、和葉の頭は彼の肩にぽすりと落ちた。柾樹は一段低くなった声でささやく。
「それとも、和葉のためだと言ってほしいか?」