S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 彼の顔面は彫刻のように美しい。長い睫毛に縁どられた黒い瞳が、甘やかに細められる。彼のような男は苦手だったはずなのに、どうしてか目が離せない。
 長い指が和葉の顎にかかり、クイと持ちあげられる。

「心配するな。すぐに、その気にさせてやるから。俺を拒める女なんかいないよ」

 自信たっぷりの柾樹に迫られ、和葉の身体は恐怖と緊張にこわばる。

「円城寺さん。やめっ――」
「柾樹でいい。そう呼べ」

 熱い唇が触れる。強引な言動とは裏腹な優しいキスだった。ゆっくりとうごめく舌先が和葉の緊張をほぐし、身体を甘く刺激する。

「んっ」

 大きな手に頬を撫でられ、思わず吐息が漏れる。その瞬間を逃さず、彼の舌が和葉のそれをからめ取る。呼吸が……浅く、早くなっていく。

「やっぱり、キスの相性は悪くないな。この先はどうかな?」

 キャメル色のブラウスのボタンを彼は器用に外していき、和葉の素肌をさらす。肩口に唇を押しつけられ、上半身がびくりと跳ねた。鎖骨から胸の谷間へと、彼は舌を這わせていく。
 柾樹はふっとかすかに笑って、和葉の耳元に顔を寄せた。

「和葉の身体、ちゃんと熱くなってきた。言ったとおりだったろ」
「き、気のせいです! 自意識過剰なんじゃないですか?」

 和葉は唇をとがらせる。
 だって、彼に恋をしているわけじゃない。それどころか、人間性にはまだ疑いを抱いている。
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