S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「でもね、まだ初期段階だから。調べてみたんだけど、大腸癌は癌のなかでは完治できる可能性が高いんだって」
〝でも、お前の母親は助からなかったじゃないか〟
どこからか聞こえてくる悪魔の声に、和葉は必死で耳を塞ぐ。
(大丈夫、おじいちゃんは助かる。あの人だってそう言ったもの!)
『必ず、助ける』
病院から癌だと連絡をもらって以来、無意識のうちに彼の言葉を支えにしていた。不安になるたびに、自信たっぷりの彼の声を思い出して力をもらっている。
「そうよね。育郎さんは実年齢よりずっと、心も身体も元気だもの。すぐに帰ってきてくれるわ」
登美子が言えば、安吾もうなずく。
「そうですよ! 育郎さんが安心して治療に専念できるように俺たちで店を守りましょう」
「ありがとう。登美子さん、安吾くん」
ふたりの言うとおりだと思った。自分たちがメソメソしていては、育郎は病院を飛び出しかねない。育郎に余計な心配をかけないようにしなくては。
「料理のほうは、師匠からずいぶん引き継いでもらっているので……なんとかなるとは思うんです。もちろん、俺の味じゃ納得できないお客さまもいらっしゃるとは思いますが」
「安吾くんの味、新しい風でいいわねって意見も多いわよ」
安吾の不安を登美子が上手にフォローする。和葉も安吾の腕は信頼している。彼ならきっと、芙蓉の味を守ってくれると思う。
〝でも、お前の母親は助からなかったじゃないか〟
どこからか聞こえてくる悪魔の声に、和葉は必死で耳を塞ぐ。
(大丈夫、おじいちゃんは助かる。あの人だってそう言ったもの!)
『必ず、助ける』
病院から癌だと連絡をもらって以来、無意識のうちに彼の言葉を支えにしていた。不安になるたびに、自信たっぷりの彼の声を思い出して力をもらっている。
「そうよね。育郎さんは実年齢よりずっと、心も身体も元気だもの。すぐに帰ってきてくれるわ」
登美子が言えば、安吾もうなずく。
「そうですよ! 育郎さんが安心して治療に専念できるように俺たちで店を守りましょう」
「ありがとう。登美子さん、安吾くん」
ふたりの言うとおりだと思った。自分たちがメソメソしていては、育郎は病院を飛び出しかねない。育郎に余計な心配をかけないようにしなくては。
「料理のほうは、師匠からずいぶん引き継いでもらっているので……なんとかなるとは思うんです。もちろん、俺の味じゃ納得できないお客さまもいらっしゃるとは思いますが」
「安吾くんの味、新しい風でいいわねって意見も多いわよ」
安吾の不安を登美子が上手にフォローする。和葉も安吾の腕は信頼している。彼ならきっと、芙蓉の味を守ってくれると思う。