S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「でも、手が足りないよね? 厨房が安吾くんひとりじゃ……」

 和葉の疑問に安吾はきっぱりと首を横に振る。

「それは大丈夫です。ここの商店会のメンバーも協力すると言ってくれてますから」

 安吾も店のためにいろいろと手を尽くしてくれていたようだ。育郎はいい弟子を持ったと、和葉は心から彼に感謝した。

「おじいちゃんが戻ってくるまで、三人で力を合わせてがんばろうね」

 三人が気持ちをひとつにしたところで、店の扉がトントンとノックされた。

「配達かしら?」

 腰をあげかけた登美子を制して、和葉が立ちあがる。

「私が出るよ」

 配達か、もしくはふらりと入ろうとした客かもしれない。

「どなたでしょうか」

 内鍵を開けて、和葉は扉を開く。そこにいた人物を見て、あっと小さく声をあげる。

「円城寺さん?」
「どうも」
「えっと、まだ夜の営業は始まっていなくて……」
「知ってる。今日は客として来たわけじゃない」

 彼はブラウンの革財布から千円札を三枚出し、和葉に押しつけた。

「先日のタクシー代だ」
「あれはうちの都合だったのでっ」

 柾樹に出してもらう道理はない。

「こんなにかかってないぞ。それに……金は腐るほど持っているしな。女に出させるのは円城寺の名がすたる」

 あいかわらずの俺さま発言だが、彼にはよく似合っていて反発する気も起きなかった。

 和葉は素直に受け取り、言った。
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