S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「では、次におこしいただける際に、なにか一品サービスさせてもらいます」
「あぁ、そうしてくれ」

 和葉は小首をかしげて尋ねる。

「わざわざ三千円を返すために?」

 彼にとっては小銭みたいなものだろうに、意外とマメなのだなと驚く。

「いや、お前に報告があって。育郎さんの主治医は俺が務めることになった」
「え?」

 癌の治療も、そのまま円城寺メディカルセンターの世話になるつもりで、主治医ももう決まっていた。中年の穏やかそうな男性医師で、感じのいい人物だった。とくに不満などなかったのに……。

「そもそも、円城寺さんって現場に出るんですか?」

 医師免許を持っているとは言ったが、彼は円城寺家の御曹司。円城寺グループは、もはや一介の病院の域をこえた世界的企業だ。直系の人間は経営に回っているものとばかり思っていた。

「いずれは経営に専念しなければならないと思うが、今は現役だ。担当患者より経営を優先したりすることは絶対にないから、そこは安心しろ」

 なぜ彼が?と疑問には思うが、病院側の都合であれば文句を言うわけにもいかない。

「承知しました。どうか、祖父をよろしくお願いいたします」

 柾樹との会話が一段落したところで、登美子が顔をのぞかせた。

「ごめんね、和葉ちゃん。銀行が代われとうるさくて」
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