S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
(たとえば、飲み屋のお仕事とか? 色っぽくもない私に需要があるのかはわからないけど探してみようか)

 ほかに稼げそうな仕事はなにがあるだろうかと、考えを巡らせていた和葉に柾樹は予想外の言葉を告げた。

「では、俺が依頼する仕事を受けないか?」
「――円城寺さんが依頼主?」

 なにかワリのいい仕事を紹介してくれるのだろうか。それならば、飛びつきたい気持ちだった。

「そうだ。受けるなら、育郎さんの治療費も銀行への借金もすべて俺が肩代わりしてやる」

 あまりにも破格の報酬で、和葉はぽかんと口を開けたまま固まった。

(治療費も借金も――?)

 どちらかといえば単純な和葉でも、ここまでのおいしい話には裏があることくらい理解できる。うますぎる話は……詐欺か、そうとうな危険があるか、そのどちからだ。

「まさか、怪しい薬の実験台とか……臓器売買とか……そういう?」

 円城寺家が大財閥になった背景には、そういう黒い裏事情があるのだろうか。
 本気で疑っている和葉に柾樹はあきれた顔をした。

「いつの時代の、どこの世界の話だ? 命を心配するような仕事ではないよ」
「な、ならどんな仕事なんです?」

 おそるおそる聞いた和葉に、柾樹はスパッと答えをくれた。

「俺の妻になれ。そして、跡継ぎを産む努力もしてほしい」
「は、はぁ?」

 ものすごく間の抜けた声が漏れた。

(つ、妻? この人、なにを言ってるの?)
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