S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
一瞬は呆気に取られたが、すぐに怒りが湧いてきた。
「あの! 私をからかいたいだけなら帰ってください。うちは今、そんな余裕はありませんから」
そうとしか思えなかった。あまりにも悪趣味だ。
「本気だ。和葉の一生をもらう代わりに、金の心配は二度とさせない。円城寺と縁続きになれば、どこの銀行も喜んで融資を申し出るだろうから芙蓉も安泰になるぞ」
「だ、だから! 名前を、勝手に呼ばないでくださいっ」
彼に呼ばれると、自分の名が別物になったように感じるのだ。ソワソワして落ち着かない、そんな気分になる。
和葉は小さくため息をついて、頭を抱えた。
「こんな、わけのわからない話を突然持ちかけられても……考えないといけないことが多すぎて」
その、わけのわからない話をすぐに断れない理由は――。
和葉はちらりと正樹に視線を送る。彼の背景に札束が見えた気がした。
(――治療費はともかく、借金返済のほうが……み、魅力的すぎて)
白状すると、店の規模に対して抱えている借金の額が大きすぎて、完済への道筋は見えていない。今はまだ、返済期限前なので『銀行側の横暴だ』と強気でいられるが、返済期限が来たら銀行に頭をさげるしかなくなるだろう。
その意味では、五味銀行の嫌みな営業マンは優秀だ。彼らにとって、芙蓉は決して優良顧客ではないだろうから――。
「あの! 私をからかいたいだけなら帰ってください。うちは今、そんな余裕はありませんから」
そうとしか思えなかった。あまりにも悪趣味だ。
「本気だ。和葉の一生をもらう代わりに、金の心配は二度とさせない。円城寺と縁続きになれば、どこの銀行も喜んで融資を申し出るだろうから芙蓉も安泰になるぞ」
「だ、だから! 名前を、勝手に呼ばないでくださいっ」
彼に呼ばれると、自分の名が別物になったように感じるのだ。ソワソワして落ち着かない、そんな気分になる。
和葉は小さくため息をついて、頭を抱えた。
「こんな、わけのわからない話を突然持ちかけられても……考えないといけないことが多すぎて」
その、わけのわからない話をすぐに断れない理由は――。
和葉はちらりと正樹に視線を送る。彼の背景に札束が見えた気がした。
(――治療費はともかく、借金返済のほうが……み、魅力的すぎて)
白状すると、店の規模に対して抱えている借金の額が大きすぎて、完済への道筋は見えていない。今はまだ、返済期限前なので『銀行側の横暴だ』と強気でいられるが、返済期限が来たら銀行に頭をさげるしかなくなるだろう。
その意味では、五味銀行の嫌みな営業マンは優秀だ。彼らにとって、芙蓉は決して優良顧客ではないだろうから――。