S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「つまり……気を使う必要もなく、うるさいことを言わない妻として需要があるということですか?」
「あぁ、それは的確な表現だ」

 彼は悪びれる様子もない。金目当ての妻と、都合のいい女を求めている夫。利害は一致していると考えられるのかもしれない。

「で、でも愛のない結婚って悲しくないですか? 円城寺さんはそれでいいんですか?」

 財閥ともなると、結婚に愛など馬鹿げていると考えるのだろうか。
 柾樹はキョトンとした顔をする。

「愛のない結婚をするなどと誰が言った?」
「たった今、あなたが提案したんじゃないですか」

 和葉は頬を膨らませる。彼は自分をからかって楽しんでいるのだろうか。
 柾樹ははじっと和葉を見つめる。彼の眼差しは、獰猛な獣のそれと同じだ。強く、鋭く、こちらを仕留めてやろうという意思を感じる。

 綺麗で長い指先が和葉の顎にかかる。和葉はびくりと肩を揺らしたが、彼はお構いなしにグッと持ちあげ自分のほうを向かせる。

「心配いらない。俺は和葉を愛するし、それ以上の重みで、お前も俺を愛するようになる」

 開いた口が塞がらない、今以上に、その表現がしっくりくるシーンもないだろう。

(ど、どこまで自信過剰なのよ?)

 だけど、その言葉はまるで特別な呪文のように和葉を支配しようとしてくる。

(私が彼を愛する? そんなことあるはずが――)

「賭けるか?」
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