S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
二章 俺にしておけ
二章
七月半ば。育郎が倒れてからちょうどひと月が過ぎた。
柾樹が適切な初期対応をしてくれたおかげもあって、育郎は目立つ後遺症などもなく順調に回復していた。今はまだ円城寺メディカルセンターに入院中で、その後に発見された大腸癌の治療計画を立てているところだ。幸いなことに、癌の進行具合はさほど深刻ではなく、完治も望めるとのことだった。
『癌治療は長期戦だ。本人も、支える家族も、あまり根つめすぎないこと』
柾樹はそんなふうに言って、和葉をデートに誘った。彼なりの気遣いなのだろうと、和葉はその提案を受け入れた。
その約束が今日だ。
午前十時。約束の時間ぴったりに、芙蓉の前に高級外車が停まる。運転席が開いて、柾樹がおりてきた。ネイビーのリネンジャケットにブラウンのパンツ。上品なカジュアルスタイルで、背景の高級車に引けを取らないセレブ感を漂わせる。
(彼の心遣いをうれしく思ったのも事実だけど……やっぱりお金の問題が……)