S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 柾樹はクックッと肩を揺らす。

「ホテルってだけで、すぐそういうことを連想する和葉のほうがいやらしいだろ」

 和葉の頬が赤く染まる。それを見て柾樹は楽しそうに言葉を続けた。

「円城寺グループがやっている高級スパリゾートが葉山にあるんだよ。連泊プランがオススメだが、今日は日帰りのつもりだ」
「日帰り……」

 早とちりをした自分が少し恥ずかしいが、さっきの柾樹の言い方はあきらかに誤解を招くものだった。和葉は軽く彼をにらむ。

「まぁ、お前がその気なら泊まっても……俺は構わないけどな」
「全然その気じゃありません!」

 柾樹の口元から白い歯がこぼれる。

(……初めて会ったときは圧倒的なオーラが怖いくらいだと思ったけど、こうやって笑っていると普通の人みたいだな。円城寺家の御曹司とは思えないや)

 けれど、『円城寺オーシャンスパ&リゾート』の豪華な建物を前にするとそんな考えは吹き飛んだ。海を臨む広大な敷地にそびえ立つ、宮殿のようなラグジュアリーホテル。真っ白な壁面とターコイズブルーの屋根はエーゲ海のリゾート地を思わせる。ここが日本であることを忘れてしまいそうだ。

 会員制で、客も選ばれた人間のみらしい。その証拠に、客用駐車場はまるで高級車の展示場だ。

「すごい……」

 和葉は思わずつぶやく。
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