S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
(そ、そんな女性ばかりじゃないと思うけど)

 和葉の困惑に気づかず柾樹は続ける。

「俺は和葉との結婚に本気だ。だから、今日は最上級の贅沢を……と思った」

 和葉の眉間にシワが寄っているのを認めて、柾樹はけげんそうに首をかしげる。

「どうしてそんな顔をする? 喜ぶところだろうが」
「デートにかけるお金と気持ちはまったく比例しないと思います。なんというか、私は……そんな考え方は好きじゃないです」

 彼は心底びっくりしたというように目を丸くする。

「初耳だな。俺がこれまでエスコートしてきた女たちは、ほかの男よりずっと豪華だと感激していたが……」
「それって――」

 言いかけて和葉は口をつぐむ。

(思ったことをすぐ口に出しちゃうのは私の悪い癖ね)

「なんだ? なにを言いかけた?」
「なんでもないです」
「そう言われると余計に気になる」
「だって、言ったらさすがの円城寺さんも怒ると思いますし」
「いいから話せ!」

 彼がちっとも引かないので、和葉は渋々先ほど思ったことを口にする。

「もしその話が本当なら……女性たちが好きだったのは、円城寺さんじゃなくてお金――なんじゃないかなぁって」

 おそるおそる彼を見ると、真顔で固まっている。かと思うと、「ぷはっ」と盛大に噴き出した。

「お前、俺のことを散々に言うが、自分だって相当な無礼者じゃないか」
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