S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 柾樹はじっと和葉を見て、柔らかな笑みを浮かべる。

「もちろん、俺も和葉好みの男になる努力をするし」

 彼の言葉はいつも迷いがなく、ストレートで、和葉を困らせる。

「私の好きなタイプは、穏やかで紳士な人です。円城寺さんとは真逆の……」

 和葉がかわいくないことを言っても、モテる男の余裕で彼は平然としている。

「ふぅん。そういう男を好きになる女の特徴を当ててみせようか?」

 ニヤッとした彼が続ける。

「悪い男に騙されやすい」
「そんなことありませんから!」

(騙されたことなんてないもん。まぁ、そもそも素敵な紳士に口説かれた経験もないけど)

 芙蓉の客層は年齢層が高めで、出会いの多い仕事とはいえない。和葉は恋愛には縁遠い日々を送っている。
 柾樹はふいに真剣な顔になって、よく響く艶のある声で言う。

「あるよ。――だから、和葉は俺にしとけ」

 ドクンと大きく心臓が跳ねる。和葉の意思を無視して鼓動がスピードを増していく。

(そんな顔しないで)

 彼にとって、自分は〝面倒がない、都合のいい結婚相手〟なのだ。それ以上の意味はないとわかっているのに、こんな顔をされたら騙されてしまいそうになる。

(悪い男は……円城寺さん自身じゃない)

 フレンチレストランはホテルの最上階に入っていた。ホワイトとターコイズブルーを基調にしたインテリアは、建物の外観と同じく地中海風といった雰囲気だ。
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