S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】

「あぁ、そうか。記者さんとかの目があるんですね」
「近頃はそういうのも減ってきた気がするけどな」
「円城寺さんも、ここにお住まいなんですか？」

　そういえば、いつも彼が迎えに来てくれるので和葉は彼の自宅を知らなかった。

「いや。俺は病院近くのマンションだ。用があって実家に泊まる日もあるけどな」

　彼はマンションと言ったが、きっと〝万〟では買えない物件なのだろう。

「今日のあいさつを済ませたら、引っ越す準備をしろよ」
「へ？」

　一瞬、なにを言われたのかわからなかった。

「引っ越し？　誰がするんです？」

　柾樹はあきれた顔でため息を落とす。

「和葉に決まってるだろう。お前、いいかげんに俺の妻になる自覚を持てよな」
「わ、私?　引っ越すって円城寺さんの家に？」
「籍を入れたら一緒に住むことになるんだから、早いほうがいい。俺のマンションと芙蓉はすぐ近くだし、なにも問題ない」

　エリートという人種はみな、こうなのだろうか。彼はとにかく行動が早すぎて、和葉の感情はちっとも追いつかない。

「え、でも……おじいちゃんが心配ですし」
「もちろん育郎さんが心配なときは帰ってもいい。が、あくまでもお前の家は俺のところだ」

（なんだかすっかり円城寺さんのペースだけど、本当にこのまま突き進んでいいのかな？　いや、今日のあいさつが失敗して破談になる可能性も十分にあるか）