S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 柾樹はものすごく楽観的に考えているようだが、それはきっと彼の性格ゆえだろう。実際には和葉が円城寺家に嫁ぐのは、いろいろと問題があると思うのだ。

(あぁ。でも破談になったら、またお金の心配をしないといけないのか。どっちに転んでも悩みは尽きないわね)

 豪邸ばかりの松濤でもひと際目立つ、大きな区画に柾樹の車は吸い込まれていく。

(ここ、公共施設かなにかじゃないの?)

 門を抜けてすぐの場所にあるガレージに彼は車を停めた。このガレージだけで、一般市民の住む住宅くらいの大きさがある。

「まさか、ここが……」
「円城寺本家だ。といっても、父は年の半分以上は海外で、本家で暮らしているのは母と姉だ」

 今日も柾樹の父親は不在らしい。そういえば、先日の柾樹の見合いのときも父親らしき人物は同席していなかった。母親と思われる女性のことは、和葉の記憶にも残っている。

(チラッとしか見ていないけれど、気品と威厳のある綺麗な人だった)

「では、あいさつはお母さまとお姉さまに?」
「そう。でも問題はないよ。円城寺家の当主は母だから。うちの父は婿養子なんだ」
「そうなんですか?」
「ビジネスとしての円城寺グループの代表は父だけど、家のことはすべて母が取り仕切ってる」

(そんなすごい人が私なんかを認めてくれるかなぁ)
< 55 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop