S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 応接間はクラシカルな洋間で、ダークブラウンを基調とした重厚なインテリアに橙色の照明。壁面を飾る有名画家の絵画も……きっと本物なのだろう。
 明治時代の貴族の館にタイムスリップした気分になる。

 その豪華な室内の奥に、柾樹の母親と姉が待ち構えていた。赤いビロード張りの椅子に姿勢よく腰かけたふたりは、圧倒的な美貌とオーラを備えていた。

 母親のほうは、やはり一度、芙蓉で会っている。彼女のほうはきっと覚えていないだろうけど。

(ふたりとも、どことなく柾樹さんに似てるな)

 柾樹の母親は華やかな友禅の訪問着を着こなし、艶のある髪はきっちりとしたアップスタイルにまとめている。大女優か、はたまた貴族かといった品格があった。
 姉のほうはモダンなブラックのツーピース。小顔でスタイル抜群なので、大胆にフェイスラインを出したショートヘアがとてもよく似合っている。

(就職活動はしたことないけど、圧迫面接ってこんな感じ?)

 なにを言われたわけでもないが、ふたりの迫力に和葉はすっかりおののいてしまっている。

「も、望月和葉と申します。今日はお時間をいただきっ」

 震える声でなんとかあいさつをしたが、思いきりかんでしまった。

「あ。今、かんだよね?」

 柾樹の姉の容赦ない指摘に和葉は身体を小さくする。恥ずかしさで言葉が続かない。

「ぷっ」

 隣の柾樹は肩を揺らして笑いをこらえている。
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