S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「唄菜ったら。ようやく来てくれた柾樹の奥さんをいじめないの!」
柾樹の母はおっとりとした口調で娘をたしなめた。想像していたより優しそうで、和葉はホッと胸を撫でおろす。
「和葉ちゃん……ね! この前、お店で会ってるわよね。柾樹の母の寧々です」
柾樹が事前に話していたのだろうか。和葉が芙蓉の娘だと認識してくれているらしい。
「堅苦しいあいさつはいいから、一緒にお茶にしましょ」
言って、寧々はにっこりとほほ笑んだ。その笑顔は、なぜか和葉の心に響いた。温かくて、懐かしい……そんなふうに感じた。
(どうしてだろう。お母さんを重ねてしまったのかな)
おぼろげな記憶しかない亡くなった母親は、寧々と同年代だ。
(私のお母さんだから、こんな美女ではないだろうけど)
「ありがとうございます」
和葉は笑って、席に着いた。
お手伝いさん、だろうか。おばあちゃんと呼んでもいい年頃の女性が緑茶とどら焼きを運んできてくれる。
「あ」
どら焼きの包装紙を見て、和葉は思わず声をあげる。
「どうかしたか?」
隣の柾樹に聞かれて答えた。
「『春虎堂』のどら焼き、大好物なんです」
春虎堂は老舗の和菓子屋で、有名なのは最中だが和葉はここのどら焼きに目がない。どうしてどら焼きではなく、最中が看板商品なのかと常々疑問に思っているほどだ。
柾樹の母はおっとりとした口調で娘をたしなめた。想像していたより優しそうで、和葉はホッと胸を撫でおろす。
「和葉ちゃん……ね! この前、お店で会ってるわよね。柾樹の母の寧々です」
柾樹が事前に話していたのだろうか。和葉が芙蓉の娘だと認識してくれているらしい。
「堅苦しいあいさつはいいから、一緒にお茶にしましょ」
言って、寧々はにっこりとほほ笑んだ。その笑顔は、なぜか和葉の心に響いた。温かくて、懐かしい……そんなふうに感じた。
(どうしてだろう。お母さんを重ねてしまったのかな)
おぼろげな記憶しかない亡くなった母親は、寧々と同年代だ。
(私のお母さんだから、こんな美女ではないだろうけど)
「ありがとうございます」
和葉は笑って、席に着いた。
お手伝いさん、だろうか。おばあちゃんと呼んでもいい年頃の女性が緑茶とどら焼きを運んできてくれる。
「あ」
どら焼きの包装紙を見て、和葉は思わず声をあげる。
「どうかしたか?」
隣の柾樹に聞かれて答えた。
「『春虎堂』のどら焼き、大好物なんです」
春虎堂は老舗の和菓子屋で、有名なのは最中だが和葉はここのどら焼きに目がない。どうしてどら焼きではなく、最中が看板商品なのかと常々疑問に思っているほどだ。