S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
どことなく場の空気がピリピリしていることを感じ取ったが、もちろん顔には出さない。いつもどおりに、全員にコースの最後の一品である甘味を提供していく。
紺色の地に百合が描かれた晴れ着に身を包んだ沙月は、思わず見とれてしまうほどに美しいが、その表情は硬い。
彼女の正面に座る男性は、沙月に負けず劣らずの美貌の持ち主だった。仕立てのよさがよくわかるダークグレーのスーツをさらりと着こなし、庶民にはとても手が出ない高級ブランドの時計も決して悪目立ちしていない。
生まれながらの、選ばれし人間。全身からそんなオーラを漂わせる男だった。
『本日いらっしゃる円城寺さまって、やっぱりあの円城寺家なのかしら』
朝の登美子の台詞が耳に蘇る。長くこの店で働いている登美子は、普段はお客さまのことをことさらに詮索したりはしないが……そんな彼女でも〝円城寺〟の名には少し驚いた様子だった。それは和葉も同じだった。
医療財閥円城寺グループは国内のみならず、世界でも広くその名を知られた存在だ。
全国にいくつもの総合病院を有しており、海外病院との連携にも積極的。病院経営のみならず、製薬会社・医療機器メーカー・エステやスパなどの美容関連・研究開発のための大学まで持っている。医療にかかわる業界すべてに、絶大な影響力を持つ巨大企業グループだ。
その円城寺一族の人間ともなれば、彼のこれだけの存在感も納得だった。
紺色の地に百合が描かれた晴れ着に身を包んだ沙月は、思わず見とれてしまうほどに美しいが、その表情は硬い。
彼女の正面に座る男性は、沙月に負けず劣らずの美貌の持ち主だった。仕立てのよさがよくわかるダークグレーのスーツをさらりと着こなし、庶民にはとても手が出ない高級ブランドの時計も決して悪目立ちしていない。
生まれながらの、選ばれし人間。全身からそんなオーラを漂わせる男だった。
『本日いらっしゃる円城寺さまって、やっぱりあの円城寺家なのかしら』
朝の登美子の台詞が耳に蘇る。長くこの店で働いている登美子は、普段はお客さまのことをことさらに詮索したりはしないが……そんな彼女でも〝円城寺〟の名には少し驚いた様子だった。それは和葉も同じだった。
医療財閥円城寺グループは国内のみならず、世界でも広くその名を知られた存在だ。
全国にいくつもの総合病院を有しており、海外病院との連携にも積極的。病院経営のみならず、製薬会社・医療機器メーカー・エステやスパなどの美容関連・研究開発のための大学まで持っている。医療にかかわる業界すべてに、絶大な影響力を持つ巨大企業グループだ。
その円城寺一族の人間ともなれば、彼のこれだけの存在感も納得だった。