S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「どうした、和葉。妙な顔して」

 柾樹がけげんそうに顔をのぞき込んでくる。和葉は寧々と唄菜にあらためて向き直る。

「あの! 本当に私が柾樹さんと結婚しても構わないのでしょうか? その、うちは老舗の料亭を営んでいますが……決して裕福ではありませんし」

 それどころか、柾樹に助けてもらわないと事業継続もままならない状況なのだ。

「あぁ、家格とかって話?」

 あっけらかんと唄菜に尋ねられ、和葉はうなずく。

「そういうの気にするのは二流の証拠よ!」

 彼女は柾樹と似たような台詞を口にする。

「和葉ちゃんが心配するようなことは起きないから大丈夫。それに、芙蓉は素敵なお店だと評判だし」

 寧々もクスクスと笑って賛同する。

「ですが、万が一にも円城寺家がなにか言われるようなことがあっては……」

 寧々はにっこりと笑って言う。

「誰もなにも言わないわよ~。だって……うちは円城寺なんですもの」

 女王然とした寧々の物言いに、和葉はもう返す言葉もなかった。

(――この母にして、この子ありってことなのね)

 物腰はおっとりしているが、寧々は柾樹以上の自信家のようだ。

 彼女は優しい声で続ける。

「そんなわけだから、円城寺家へようこそ。和葉ちゃん!」
「不肖の弟だけど、よろしく頼むわね」
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