S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 育郎はかすかに頬を緩めた。

「あの先生が見かけほどチャラチャラした男じゃないことはわかってる。――うん、案外と似合いの夫婦になるかもな」

(お母さんに対する後悔から、おじいちゃんはいつも『和葉の人生。自分の好きに生きろ』と言ってくれていたものね)

 とはいえ、こんなにあっさりと受け入れてくれるとは思っておらず、ちょっと拍子抜けした気分だ。

 育郎はニヤリと笑う。

「それにしても、和葉は面食いだったんだなぁ」
「べ、別にそんなんじゃ」

 手術のことや柾樹のマンションへの引っ越し予定などを相談して、和葉は病室をあとにした。

 長い廊下をエレベーターに向かって歩いていると、ちょうどこちらに歩いてくる安吾の姿に気がついた。和葉は早足で彼に近づく。

「安吾くん!」
「和葉お嬢さん。お見舞いですか?」
「うん。今、終わったとこ。安吾くんもおじいちゃんのところ?」

 今日、芙蓉は定休日だ。

「はい。ゆうべ、常連さんから見舞いの品を預かったので」
「そうだったんだ。声をかけてくれたら私が持っていったのに。せっかくの休日にわざわざごめんね」
「いや。俺も師匠に会いたいので」
「あ、安吾くん。少しだけ話をしてもいいかな?」
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