S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
(でも、安吾くんにも本当のことは話せないよ)

「うれしいと思ってるよ。でも、おじいちゃんの手術のこととか……不安もあるから、喜んでばかりもいられなくて」

 安吾は余計な口を挟まず、和葉の言葉に耳を傾けてくれる。

「円城寺さんって、楽しい人でね……一緒にいると、不安な気持ちがどこかに吹き飛んでいくの。彼が言うのなら、すべてうまくいくって信じられる」

 この言葉に嘘はなかった。柾樹が育郎を『絶対に助ける』と言ってくれたことは、和葉の心の支えになっている。

「そうなんですね」

 安吾はゆっくりと、うなずいた。

「それを聞けて、安心しました。結婚おめでとうございます、和葉お嬢さん」

 いつもの安吾らしい、気持ちのいい笑顔で彼は祝福の言葉をくれた。

「ありがとう」
「考えてみたら、とんでもない玉の輿ですね!」
「あはは。セレブな奥さん、私には似合わないよね」
「そんなことないですよ」

 話の区切りがついたところで、安吾が立ちあがる。

「じゃ、俺は師匠のところに行ってきます」
「うん。私は先に帰るね」

 安吾に手を振って、和葉はくるりと身をひるがえす。その背中に、切羽詰まったような彼の声が届く。

「――和葉お嬢さんっ」

 和葉は振り向いて彼と視線を合わせた。安吾は怖いくらいに真剣な顔をしている。

「俺、俺は……」

 彼は言いよどみ、口を閉ざす。

「どうしたの?」
「いえ……」
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