S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
三章 どんなふうに抱かれたい?
三章
九月に入っても、照りつける西日はまだ夏に未練があるようで、ギラギラとまぶしい。その力強さを物語るように、街路樹が濃い影を落している。
ここ中央区の一等地に、柾樹の住むタワーマンションがそびえている。
「手荷物はこれだけか?」
車のトランクから彼が和葉のボストンバックを出してくれる。
「はい。大きいものは先に送らせてもらったので」
といっても、すでに柾樹が住んでいる部屋なので家具や家電はそろっている。和葉は身の回りの品をまとめただけで、引っ越しと呼ぶほどの作業ではなかった。
「でも、おじいちゃんの退院日が決まったら、そのときはしばらく帰ってもいいですか?」
「もちろん。術後は気持ちが弱ったりもするから、できるだけ一緒に過ごしてあげるといい。病は気からというのは本当で、病気と闘うためには本人の〝生きたい〟という強い思いが一番必要だ」
一週間前に柾樹の執刀で育郎は手術をした。無事に成功し、完治への望みをつないでいた。
様子を見ながら、二、三週間後には退院できそうという話になっている。
「ありがとうございます」
彼は強引な面もあるが、大事なところではきちんと和葉の気持ちに寄り添ってくれる。
嫌いになりきれないところが、和葉にとってはまた困ったものなのだ。
「お部屋は何階ですか?」
「最上階だ。ワンフロアぶち抜きでオーナーズルームにしてある」
和葉の目が点になる。このクラスのマンションなら、ひと住戸も十分な広さがあるだろうにワンフロアすべてとは……。それに、オーナーズルームというからには、このマンション自体も円城寺家の所有なのだろう。
(やっぱり別世界の人、だよね)
完璧に整った柾樹の横顔が少し遠く感じられた。
「妙な顔してどうした? この家が気に入らないか?」
柾樹が顔をのぞきこんでくる。
「いえ、そういうわけじゃ。あまりにも立派で驚いただけです」
「すぐに慣れる。まぁでも……お前がほかの部屋がいいなら、一緒に引っ越してもいい。そういうのは遠慮なく言え」
「六畳一間のアパートがいいって私が言ったら、どうするんですか?」
九月に入っても、照りつける西日はまだ夏に未練があるようで、ギラギラとまぶしい。その力強さを物語るように、街路樹が濃い影を落している。
ここ中央区の一等地に、柾樹の住むタワーマンションがそびえている。
「手荷物はこれだけか?」
車のトランクから彼が和葉のボストンバックを出してくれる。
「はい。大きいものは先に送らせてもらったので」
といっても、すでに柾樹が住んでいる部屋なので家具や家電はそろっている。和葉は身の回りの品をまとめただけで、引っ越しと呼ぶほどの作業ではなかった。
「でも、おじいちゃんの退院日が決まったら、そのときはしばらく帰ってもいいですか?」
「もちろん。術後は気持ちが弱ったりもするから、できるだけ一緒に過ごしてあげるといい。病は気からというのは本当で、病気と闘うためには本人の〝生きたい〟という強い思いが一番必要だ」
一週間前に柾樹の執刀で育郎は手術をした。無事に成功し、完治への望みをつないでいた。
様子を見ながら、二、三週間後には退院できそうという話になっている。
「ありがとうございます」
彼は強引な面もあるが、大事なところではきちんと和葉の気持ちに寄り添ってくれる。
嫌いになりきれないところが、和葉にとってはまた困ったものなのだ。
「お部屋は何階ですか?」
「最上階だ。ワンフロアぶち抜きでオーナーズルームにしてある」
和葉の目が点になる。このクラスのマンションなら、ひと住戸も十分な広さがあるだろうにワンフロアすべてとは……。それに、オーナーズルームというからには、このマンション自体も円城寺家の所有なのだろう。
(やっぱり別世界の人、だよね)
完璧に整った柾樹の横顔が少し遠く感じられた。
「妙な顔してどうした? この家が気に入らないか?」
柾樹が顔をのぞきこんでくる。
「いえ、そういうわけじゃ。あまりにも立派で驚いただけです」
「すぐに慣れる。まぁでも……お前がほかの部屋がいいなら、一緒に引っ越してもいい。そういうのは遠慮なく言え」
「六畳一間のアパートがいいって私が言ったら、どうするんですか?」