S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 無理に決まっている。そう言われるつもりで尋ねたのに、彼の答えは想定外だった。

「和葉と一緒ならどんな部屋でもいい。むしろ円満な夫婦生活のためには狭いほうがいいのかもしれないな」

 なぜか、柾樹はうれしそうにニヤニヤしている。

「そ、そういうリップサービスは不要ですからっ」

 和葉は口をとがらせる。

(知ってるもの、円城寺さんの本音。別に私を望んでいるわけじゃないってこと)

 でも、こんなことを考えてしまうのも、まるで拗ねているみたいで悔しいのだ。

 エレベーターは高速なのにとても静かで、あっという間に和葉たちを最上階の五十階まで運んでくれた。

「どうぞ。今日からここが俺たちの家だ」

 柾樹の部屋はハリウッド映画のなかでしか見たことないような豪華さで、和葉は目を白黒させてしまった。とにかくリビングルームが広い。ダンスパーティーくらいなら余裕で開催できそうだ。和葉は前面に広がる大きな窓に近づき、そっと手をつく。

(五十階のお部屋なんて怖そうと思っていたけど……)

 ここまで高層だと、逆に現実感がなくなって恐怖は感じなかった。
 今日は天気がいいので、東京の名所をあちこちに見つけることができた。

「すごい。私の乏しい語彙力ではそれしか言葉がありません」

 柾樹は白い歯を見せて笑う。
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