S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 どうやら、柾樹のファンが押しかけてきたと勘違いされているようだった。

(外科の看護師さんってたくさんいるし、柾樹さんの結婚相手が私とは知らないのかな?)

「その、実は私、円城寺先生と結婚を……」

 和葉が事情を説明すると、彼女は心底驚いたように目を白黒させた。

「えっと、円城寺……柾樹先生のことですよね? 彼は独身ですけど」

 意地悪で言っているような雰囲気はまったくなく、本当にびっくりした顔をしている、むしろ……和葉がどうかしているのでは?と警戒しているようた。

「と、とにかく、お約束がないと会うことは難しいと思います」

 早口で言って、彼女はそそくさと踵を返してしまった。

 残された和葉は、呆然とその場に立ち尽くす。すぐに状況をのみ込むことができなかった。

(たまたま彼女が知らなかっただけ……よね?)

 そう思いたいけれど、柾樹はここの外科医というだけではなく円城寺家の御曹司だ。彼の結婚はビッグニュースになりそうな気もする。相手が入院していた育郎の孫娘ということは知らなくても、柾樹を独身だと信じているのは不自然じゃないだろうか。

(柾樹さん、結婚したことを職場で話していないのかな?)

 柾樹の家族にあいさつもしたし、婚姻届も提出済み。結婚式も落ち着いたらやるつもりで準備を……と話していたところなのだ。もうとっくに、職場にも報告しているものと思っていた。
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