光と心

1話 俺の名は



俺は空が好きだ。


空は人間のような表情があるから好きだ。


晴れは笑顔。曇りは不機嫌。雨は悲しい。


実際に天気によってその日の気分が左右される。


そんな空が好きだ。


今日の天気は快晴。


雲ひとつ無い青空は太陽の強い日差しは
コンクリートの建物や道路を温め
さらに気温が上がる。


蝉たちは短命の時を高らかに歌い
その音が鼓膜に響く。


最高気温を達成した本日。
皆が涼しい場所を求めている中
俺はとある屋上にいた。


その場所とは俺の通う学校の屋上ある。


赤鳴(あかなか)高校。
男子高校である我が母校は
この近辺でかなりの問題児
言わば不良やヤンキーと言われる奴らの
ゴミ溜めみたいな場所だ。


そんな学校の屋上で俺はどっかの教室から
パクってきた椅子に座りいつものように
空を眺めている。


「あっちぃーな、、」


今昼休み。
1日で1番太陽が昇っている時間帯に屋上で
それも、日陰ではなく直射日光を
浴びているのだから仕方ない。


手を扇子代わりにして仰いでいると
屋上のドアが開く音がした。



俺は視線を変えずに


近寄ってくる足跡を聞いていた。


「こんな暑いのによくこんなところに居れるね」


はいコレ、と買ったばかりであろう
水滴が滴り落ちるペットボトルの水を
俺に渡す。


「おう。サンキューな」


受け取ると俺は蓋を開けて
中身が半分になるまで一気に流しこむ。


屋上に現れたこいつは和樹(かずき)
俺と同じ3年の同級生で
この学校では少ない心を開いている奴の1人。
見た目は、、とりあえずイケメンだ。
勉強もソコソコできて運動神経も抜群で
中学時代はサッカー部の部長もしており
和樹が中学入学してから常に全国大会に出場して
スタメンには和樹の名前が必ず記載されるほどの
実力の持ち主。
こんな学校に入らなければ今頃
生徒会長とかになっているに違いない。
そんなコイツにも悪い癖がある。


「めっちゃ飲むじゃんw
そんなに暑いかったんならせめて日陰位に
 いけばいいのに」


「うるせ。俺はここから見る空が好きなんだよ」


「空ね、、まだあの約束守ってるんだ。」


「、、、」


「可愛いとこあるじゃん」


「うるせーつーの」


和樹の俺を茶化す会話をしてるなか
開けっぱなしにしてた屋上の扉の方から
何やら話しながらここに上がってくる
奴らがいた。


「だから!やっぱり格闘技の中で
 1番最強なのは柔道だと思うんすよ!
 立技や寝技!どの体勢になっても有利に戦える
 柔道こそ格闘技の頂点ですよ!」


「甘いな。格闘技の中で最強なのはボクシングだ。
 拳と拳の殴り合いだけではなく
 相手の動きや視線、息や手の角度。
 無駄な動きを一切せず拳をどう当てるかの読み合い
 まで視野に入れて戦えるボクシングこそ最強だ」


柔道やらボクシングやらガミガミいなが
屋上に現れたのはいつも絡んでいる奴ら
の幸太郎と真二(しんじ)の2人だ。


柔道が最強だと言ってたのが幸太郎。
学年は一個下の2年だが真二の中学のときの
後輩で可愛がっていたらしく
その流れで俺たちとも絡むようになった。
テンションが高く喋っていないと
死んでしまうのではないかぐらいに
やかましい奴だが
幸太郎がいると場が賑やかになるので
とりあえず一緒にいる感じだ。
なぜかいつも制服のシャツではなく
バナナと鯨のイラストがプリントしてある
青いパーカーを着て登校している。


そしてボクシングが最強だと言ってのが真二。
同じ3年んで実家がボクシングジムを経営いている
影響なのか非常にボクシングを愛している。
前にキックボクシングはやらねーの?って聞いたときは
ガチギレして3時間説教されている感じで
ボクシングのことをタラタラと言われたの
時があったから真二の前ではもう
ボクシングの話しはしないと決めている。
ツーブロのオールバックで眉毛を全剃り
している見た目は一昔のヤンキーのようだ。


「なーにお前らまたどっちが強い論争してるの?w
飽きないねー」


「いやいや和樹さん!これは大事なことですよ!
 格闘技を嗜んでいる者として白黒はつけないと!」


「その通りだ。白黒は大事だ。」



「だったら今ここで白黒つければ?w」


「、、、」


「、、、」


和樹の提案に目を合わせる幸太郎と真二


「いやいや
 未経験者相手にするのは卑怯ですよ!
 武の道に反します!」


「確かにトーシロ相手に勝っても 
 それは勝利じゃなくただのイジメだ。
 そもそもザコ相手している時間ないしな」


「あ!今酷いこと言いましたね!
 この眉無しオールバックヤンキーが!
 いくら真二さんでも許しませんよ!」


「なら一発殴ってみろよノーセンスパーカー野郎。
 ほらハンデとして一発殴らせてやるよ。
 そしたら正当防衛としてボコボコにしてやる」


ここが和樹の悪いところだ。
相手を挑発してる怒らせるのが好きらしい。
根っからのドSだ。
 

けど、、そんなことより、、


「あー!うるせーぞお前ら!
 こんなクソ暑い中ギャーギャー騒ぐな!」

我慢の限界を超えた俺。
流石に騒ぎすぎだ。


「すいません直哉さん、、あっ!そうそう!
 3人に観てもらいたいものがあるんですよ!」


何かを思い出したかのように
幸太郎はスマホを取り出した。


「これ昨日同じ2年の奴から
 送ってもらったやつなんですけど」


そういうと3人は幸太郎のスマホに
集まり画面を覗き込む。
すると画面一杯に男の顔が写っている
動画が再生された。


『おっ!コレ撮ってるか?
 よう赤鳴の諸君!観てるか〜?
 特にこれを今見ている4人。
 君達の可愛い生徒ちゃんたち数人ボコらせてもらったわ!
 怒った〜?怒ったかな〜?そりゃ怒るよね〜。
 どうしてこんなことしたかというと
 明日の8月2日の午後16時に廃墟になった
 松島工場に4人でこい!そこで4体4のタイマン勝負を
 しようじゃないか〜!。逃げんじゃねーぞチンカス共!』


と言い動画は終わった。


「このやられた奴らは本当にうちの生徒か?」


「間違いありません。昨日から5人欠席してます」


「だとしたらコレは大問題だな。
 この映っていた男には見覚えがある。
 きっと黒道高校の奴だな。間違いない。」


「はい。この動画を送ってくれた奴も
 そう言ってました。しかs」


「関係ない」


和樹と幸太郎の会話を断ち切るように
俺は声を出した。


「どこのどいつでも関係ない。
 売られた喧嘩は買わないとな。
 それが俺の流儀だ」

「やるき満々じゃんwウチの大将」


「そうっすよね!やりましょう!
 やっちまいましょう!」


「大将がそういうなら仕方ないよな。
 付き合うぜ」

久々の喧嘩にもうすでに武者震いのような
ワクワクが全身をかけめくる。

「後悔させてやろうぜ。
 そして動画の奴の身体に覚えさせてやる。 
 この俺の名を、雲無直哉(くもなし なおや)の名前をな!」








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