キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「そうだ頼くんっ、ハンドサインのことだけど、下ピースは外角ストレートだっけ?」
「内角攻めのスライダー」
「あっ、内角スライダーか!えへっ、聞いて良かった」
「……聞かれて良かったよほんと」
「わりーねっ」
アンバランスすぎる。
個室のなか、女の子しか身につけない下着を脱いで、男の子になるためのものを着けながら。
男口調で男友達と会話して、だなんて。
なんてカオスな空間なんだろう。
「よしっ、準備万端!」
かなり肌に優しい素材で作られたタンクトップみたいで、すぐに地肌へとフィットしてくれた。
想像していたよりも苦しくなく、通気性だって抜群、これなら運動にも支障は出なさそう。
「カンナ」
「んっ?」
トイレを出ようとすると、他にも何かあるのか呼び止められた。
「ちょっと俺に抱きついてきて」
「……えっ、なんで…?」
「本当に大丈夫そうか確かめたいから」
「………」
これは、必要なこと。
こんな実験ができる相手も頼くんしかいない。