キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
頼くんがいるから
「いいかなアホの子たち。ってか、アホ。ただのアホたち。そもそも問題は簡単に言うと、この点Pと直線Aの距離を求めよって書いてあんの」
「「うっす、頼先生」」
学生であれば誰もが通る道、テストなるもの。
7月初旬の期末テストに向けて、わたしはムツミと一緒にとある先生からのご教授を受けていた。
「その答えが面白いほどお前ら揃っちゃってんだよね」
「「まじすか頼先生」」
「“なぜ点Pは動くのですか”って。なにこれびっくりなんだけど。
こんなの解答欄に書いてどーするんだよ聞いてないんだよお前らの質問なんか。わかる?俺が言ってること」
「「いや、そこが納得できないとやっぱり」」
並んで座ったわたしとムツミの前、数学の教科書を手にした頼くんはいつもはしていないメガネ姿。
それっぽい雰囲気作りから大切にしてるんだと。
「そもそも動くなって話じゃね?なあカンナ」
「おう!こいつさえ動かなければ俺たちはわざわざ距離なんか求めなくていいわけだし!」
「ど正論すぎ。ずっと直線Aと添い寝してりゃいーんだよ点Pなんか。すべては点Pのせいだ!!」
「おのれ点Pめ!!」