キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「セーフ!やったなカンナっ!結局引き分けがいちばん優しい結果だよな!!」
「…ええ…、俺ってムツミなんかと同じ学力なの…」
「おい裏切り者!!!」
50点以上を取れば合格。
頼くんと琥珀くんの手助けもあって、わたしはなんとか期末テストを乗り切ることができまして。
この学校の生徒として、男として過ごす初めての夏休みがじりじりと近づいていた。
「カンナは夏休み、実家に帰省?」
「の予定!ずっとじゃないとは思うけど~」
「気をつけなよ。いろいろ」
「いろいろ…?」
「…おまえがひみつの王子様ってこと」
ほんと、わたしの生活は頼くん様々だ。
わたしが質問すると必ず「お前が男だからそうするんだよ」的なことを言ってくるけれど。
実は誰よりも女の子として扱ってくれているのは頼くんなんじゃないかって思う。
今年の夏はどんな夏になるんだろう。
苦しい夏になったとしても、楽しい夏になったとしても。
わたしの隣に頼くんが居てくれることだけは、大きな確信としてあった。