キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「お前らほんとやめろよ。この旅館の評判も下がるんだからな」
「…ああ、ごめんムツミ」
「いや俺じゃねーだろ。謝り倒さなきゃなんねーのは」
「……ごめんカンナ」
へーきだよ、大丈夫だよ。
俺こそごめん。
男のノリってやつに付き合いきれなくて。
男子校で生活していれば、あんなの日常茶飯事だ。
慣れなくちゃいけないのはわたし。
上手くかわせる方法を見つけないといけないのも、わたし。
「そろそろ寝よーぜ。今日はお疲れ」
「おつかれー」
日中の疲れもあってか、みんなが寝息を立てるまではわりと早くて。
わたしは落ち着かない動悸に襲われて、今日は眠れそうにないと思いながら無理やりにも丸まって目をつむっていたとき。
最初の予定で並んだ男たちのなか、左隣に寝ていた頼くんが腕を伸ばしてきた。
「…カンナ、おいで」
「っ、」
彼もまだ起きていたらしい。
暗闇のなか、頼くんの声だけで不安が和らぐ。
「大丈夫。もうあんなこと2度とさせないから、俺が」
「……うん」