キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
さっきのクラスメイトたちとは正反対だったから、こうして男で生きれてること。
「俺ね、頼くん以上に優しいひと見たことない」
彼の反対隣、背中を向けて寝ている神様もまた、やさしいひと。
でも頼くんの優しさには厳しさも備わっていて。
優しさだけじゃないから、それは本当に優しいの。
自分でも混乱してくるけど、表現するならそんな感じ。
「…ねえカンナ」
「わっ…」
同じシャンプーの匂いが鼻いっぱいに広がった。
わたしの背中に回った腕が「もっと来て」と言うように抱き寄せてくる。
体格差……、すごいというか、ひどい。
よくこんな身体で男のふりしてるねわたしって、馬鹿馬鹿しくも思えてくる。
なにかをわたしに訴えてきてるのかもしれないけど、ごめん頼くん。
頼くんの腕のなかが心地よすぎて眠っちゃいそう……かも。
「優しいだけの存在なんか嫌だよ俺」
「……じゃあ…きびしくなる?」
「…なんでそっちの発想になるのお前って」
アホの子、と。
言いながら笑うことで、そこにどうしても乗っかってしまう甘さ。
この甘さは彼のものに似ていた。
さっき、縁側で。
誰かと楽しそうに電話をしていた琥珀くんの声と。