キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「でも…よりくん、こーいうのは男同士だからって……言ってた」
男だからこそ、こうするんだって。
女の子にはもっと優しくする頼くんらしいから。
でも頼くんは格好いいんだから、こんなにも経験が何もないわたしにされると困るところもある。
「俺みたいな立ち位置はさ、ああでも言わないと簡単に作れないんだよ。…今だって」
なにを……?
なにが作れないの、頼くん。
なにを作りたいの、頼くん。
「───…カンナチャンに男として触る口実」
どこで意識が途切れたかはよく覚えてなくて。
安心して眠れたことは間違いなくて、悪夢も見なかった夜が明けた頃。
ただ、不思議な体験をした。
それは朝方だったように思う。
まだみんな寝ているなか、誰かひとりだけ、頼くんに包まれながら眠るわたしのそばに来たんだ。
「………?」
夢か現実かハッキリしない境界線で、うっすらと開いた視界に。
さらりとわたしの髪を撫でて、布団をかけ直してくれた銀髪の神様がいたこと。
それから雨がピシャリと上がってみんなが目覚めた朝には、その神様はとっくに古民家を出て行ってしまっていたこと───。