キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
唐突すぎるお誘いだった。
メッセージは何度か交わしていたとしても、こうして声を聞くことは久しぶり。
頼くんはどんな夏休みを過ごしているんだろう?と、それは休み明けの話題にしようと思っていたのに。
『どこの公園にする?学校の近くでいい?』
サクサクと進んでしまう。
本当に彼はこれからわたしを呼び出すつもりらしく、スマホの奥からはセミの鳴き声が聞こえた。
頼くんもしかして、もう外で待ってたりするの…?
マンションの場所も教えてあるから、来てたりする…?
「…ごめん頼くん。いまね、おれね、実家にいるの」
『え……、あ、そうだ帰省するって言ってたっけ』
「うん…、電車で1時間半だし……、だから明後日とかにしよーよ!」
『…あー、ちょうど明後日は俺が田舎のばあちゃん家』
あるあるだ。
わりとスケジュールってこういうところがある。
高校2年生の夏、1年しかない期間。
本当にこれでいいの、わたし。
『まあ、しょーがないね。…大きいの買いすぎちゃったな』