キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
シオンさんがそっと伸ばした腕を分かりにくい動きでかわして、頼くんはわたしに笑いかけた。
「志音は俺たちより1歳年上なんだよね」
「そうなんだ…」
もっと年上に見えた…。
老けているとかではなく、大人っぽい。
日本人なのだろうけれど、比べ物にならない魅力たっぷりの女性だった。
表すなら、果実のよう。
フレッシュで瑞々しくて、甘くて、酸っぱくて。
誰もを虜にしてしまうほど、クセになる。
「充実してそうで良かったよ志音。じゃあ俺たちはこれで」
「えっ、まだまだ頼とも話したいわ…!せっかくなんだし、どこかでお茶でもしましょうよ!ほらカンナくんもご一緒に!」
「琥珀、すごい会いたがってたからさ。いろいろ話したいこともあると思うし、…ふたりでゆっくりして」
「あっ、頼……!」
頼くんの名前、たくさん呼んでる…。
琥珀くんは離れた場所で見守っているだけだった。
わたしが彼の手を引いて混ぜてあげたくなったくらい、すごく寂しそうな顔をしていた。