キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
なにを確かめているんだろう。
ひとつひとつ、熱すぎる頼くんの手は。
「…あー、やっばいかも。その顔」
やばい…?
なにがヤバいの、頼くん。
ひとの唇で遊んで、耳たぶで遊んで、たぶんヤバいのは頼くんだ。
「ねえ。好きな子が失恋して、すっごい傷ついて泣いてるときに付け入る男は……ずるい?」
そんなこと言われたって、わからない。
頼くんの好きな人はどんな人なんだろう。
きっと優しい人なんだろうなあ…。
だって頼くんはこんなにも優しいんだから。
「カンナ、…やっぱりそれはずるい?」
「……わからぬ」
「…ついに武士?そっか、アホの子は武士になってもアホの子かあ」
「おうよっ」
投げやりぎみな返事にクスッと笑った頼くんは。
「…かーわい」とつぶやいて、わたしを腕に抱く力を強めた。
「なんでこんな柔らかいの、おまえのカラダって」
こんなにも優しくされて。
こんなにも女の子として扱われて。
なぜかまぶたには、せっかく止まったはずの涙がじわりと浮かんだ。