キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
➴⡱moment.3
初めて、初めて、初めて
「じゃあ最後は……カンナか」
「………」
さすが特殊コース制度が設けられている高校は違う。
一般教科+特殊授業。
そしてわたしが所属しているのはバンドコース。
ひとりひとり、こうしてクラスメイトたちの前で得意楽器を発表していくんだと。
ムツミはドラム、頼くんはギター。
彼らが発表するときだけ、クラスメイトたちは見入っていた。
「おいカンナ、いけそうか?」
「……むりそう」
「みんな楽しみにしてるぞ。お前の……ふっ、リコーダー」
あ、笑いやがった。
あの担任はもう教師失格だ。
じいちゃんに言いつけてクビにでもしてもらおうか。
「カンナー、オレ聞きてえよお前の素晴らしき笛の音!」
「よっ、バンドコースの異端児!」
「なあなあ動画撮っていい?どこにも載せねーから!話のネタにするくらい!」
まったくバカにしすぎだ。
お腹を抱えて呼吸するにもままならない生徒まで発見。
だってバンドなんかそれまで興味もなかったし、ここに来て初めて知った楽器もあるし…。