キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
ギターとベースの違いも知らなかったのがわたしだ。
そんなわたしが用意できた楽器は小学校で使ってたピアニカか、中学のときに使ってたアルトリコーダーのみ。
「で、演奏してくれる曲は?」
「……か、かえるの合唱」
ぶはっっ!!!と、こらえきれなくなった数人が全員の笑いを誘った。
学校内の演奏ホールにて、ステージの真ん中に立たされたわたし。
なにこのステージ…、
普通に音楽室とかじゃダメなの…?
こんなの大きく見て立派ないじめとして考えても間違いじゃないぞ。
「はいではカンナで、かえるの合唱。どうぞ」
開き直るしかないっ、カンナ…!!
ここまで来たらしっかりと演奏してやろう!!
とくに練習なんかしてないけどっ、あのフレーズを何回か繰り返せば1曲になるだろうし…!
「よしっ!い、いきまーー……、っ、」
「どうした?」
「い、いやっ、黙って聞いてろお前ら…!」
パチッと合わさって、口をパクパクさせてきた彼は。
がんばれ───って。